図1 プラズモイド型乱流リコネクションのMHDシミュレーション結果 [1]。(a) 磁力線(黒線)およびプラズマ速度vxの分布(カラー)。 (b) プラズマの発散(div v)の分布。(c) 高エネルギー粒子の加速シナリオ。黒矢印は衝撃波面の伝搬方向。

 太陽フレアは、プラズマ中で磁力線が繋ぎ変わる「磁気リコネクション」によって駆動されています。フレアの磁気リコネクション領域の詳細構造はよくわかっていませんが、大量のプラズモイド(磁気島)を伴う乱流状態になっていることが有力視されています。こうした姿が、PhoENiXの高分解能観測で見えるようになることを多くの研究者が期待しています。
 今回、我々は、太陽コロナのような磁気圧優勢(ガス圧 << 磁気圧)環境における乱流的磁気リコネクションの性質を、大規模MHDシミュレーションを使って調べました。その結果、定説では1% 程度とされている磁力線の繋ぎ換え効率(リコネクションレート)が、磁気圧優勢環境ではプラズマ圧縮効果によって倍近く速くなることが明らかになりました。
 これに加えて、リコネクション領域の新しい構成要素が見えてきました。図1(a) はシミュレーションで得られたリコネクション領域内部の拡大図で、プラズモイドが次々と生成されている様子が見えています [1]。このときの速度 [図1(a)] やプラズマ発散項 [図1(b)] には、各所に縦向きの筋状構造が現れています。図1(b) の赤色領域はプラズマが圧縮されるdiv v < 0 領域です。これらの縦構造は、プラズモイドの横方向の運動によって作られる遅進衝撃波で [2]、リコネクション領域は無数の縦衝撃波が飛び交うダイナミックな世界であることがわかってきました。
 磁気リコネクションに伴って、一部のプラズマ粒子が、磁力線の繋ぎ換え部やプラズモイド内部で高エネルギーまで加速されると考えられています。今回発見された縦衝撃波は、こうした粒子加速の標準シナリオを修正する可能性を秘めています。例えば、図1(c)の赤の線で示すように、粒子が上流側にいる間に衝撃波に跳ね返されて、事前にエネルギーを得る可能性があります。また、青の線で示すように、粒子がプラズモイド内を運動している間に、繰り返し衝撃波に出会ってエネルギーを得る可能性もあります。
 縦衝撃波の性質やそれに伴う粒子加速の可能性は、今後のさらなる理論・シミュレーション研究によって明らかになっていくはずです。また、我々は、この研究で利用した超並列シミュレーションコード「OpenMHD」をインターネットで公開しています [3]。この問題に興味をお持ちの方は、ぜひOpenMHDを使って発展研究に取り組んでいただければと思います。

[1]    Zenitani & Miyoshi, ApJ 894, L7 (2020)
[2]    Zenitani & Miyoshi, Phys. Plasmas 18, 022105 (2011)
[3]    https://sci.nao.ac.jp/MEMBER/zenitani/openmhd-j.html

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