太陽フレアにおける磁気再結合を出発点とするエネルギー変換の概略。「粒子の加速」においてミッシング・リンクが生じている。

 磁気再結合は、磁力線がつなぎ変わることによって磁場中に蓄えられた磁気エネルギーを爆発的に解放、そのエネルギーをプラズマの塊の放出(プラズマの塊の運動エネルギー)・プラズマの加熱(熱エネルギー)・粒子の選択的加速(加速粒子の運動エネルギー)などに変換するプラズマ中のプロセスである。その変換過程においては、電流シート、プラズマの流れ(フロー)や塊(プラズモイド)・乱流・衝撃波・加速粒子など、ミクロからマクロなスケールにわたる様々な現象がシステムとして生じる(図参照)。これらの諸現象(変換されたエネルギーが観測を通して可視化されたもの)は、まさに宇宙の活動そのものである。
 エネルギーの変換先として特筆すべきは、粒子の加速である。太陽フレアの場合、非相対論的な現象にも関わらず、解放された磁気エネルギーの多く(約70% [1])が粒子の加速に費やされる。つまり、エネルギーの主要な担い手である加速粒子の生成〜伝搬〜散逸の理解は、太陽フレアを理解する上で欠かすことの出来ないキーストーンである。
 しかし既存の観測・理論では加速粒子を十分に評価できておらず、エネルギーの変遷に大きなミッシング・リンクを生じさせている(図に赤破線矢印)。このリンクを繋ぐためには、加速粒子を含む各種エネルギーの変遷を定量的に追跡する必要がある。
 PhoENiXが実施するX線集光撮像運行観測は、太陽フレア全体に対して、空間・時間分解した熱的・非熱的スペクトルが取得できるため、このリンクを繋ぐことが期待できる。
 その発展性は大きく、粒子加速、コロナ加熱、宇宙天気といった太陽物理学における複数の重要課題にエネルギー論の観点から挑むことができる。

[1]    Aschwanden et al., 2017, ApJ, 836, 17

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