(a) X-line近傍の電子拡散領域(EDR)を扱った粒子計算[1] 。(b) 磁気島が多数発生するマクロスケールな2流体計+テスト粒子計算[2]。(c) グローバルな背景磁場(垂直成分)を考慮した粒子計算結果[3]。

 磁気再結合(以下、リコネクション)は、磁力線が繋ぎ変わる事で磁気エネルギーをプラズマの熱及び運動エネルギーに変換する宇宙物理において最重要なエネルギー変換過程の1つである。太陽表面や地球磁気圏尾部領域で起こる同過程は、太陽フレアやオーロラサブストームを引き起こし、これらの現象に伴う高エネルギー粒子の生成に直接関わっていると考えられている。太陽表面や磁気圏尾部で起こるリコネクションは全体としては電磁流体(MHD)スケールであるが、近年の計算機資源の発達によりMHDスケールのリコネクション過程を粒子計算により扱う事が可能になった。これにより、効率的なエネルギー変換がX-lineと呼ばれる磁力線が繋ぎ変わる点を囲む電子スケールの電子拡散領域(EDR)で起こる事(図A)、マクロスケールでは、隣合うX-line間にできる磁気島(プラズモイド)に捕獲された電子が統計的に加速されより強い電子加熱が起こる事(図B)、グローバルな背景磁場構造を考慮すると、背景磁場の強い地球(または太陽表面)側でより強く電子加熱が起こる事(図C)が示されてきた。
 これらの計算で示される個々の電子の加速過程は電子スケールであるが、システム全体の加熱は、統計的な要因が関わり、プラズモイドなどマクロスケールの物理に大きく作用される。
 これまで地球磁気圏においては、人工衛星を用いたその場観測により、EDRにおけるエネルギー変換効率が捉えられるなど[1]、シミュレーションに見られる電子加熱過程が部分的に示されてきた。しかし、その場観測データは主に衛星軌道上に限られるため、システム全体の加熱効率や、加熱・加速された粒子のマクロな空間分布及びその時間発展を把握する事は難しい。
 一方太陽の撮像観測では、システム全体の発展を追うことができ、PhoENiXでは、軟X線〜硬X線帯域の高いダイナミックレンジで、これまで多く観測されてきた太陽側の強磁場領域に加えX-line及びプラズモイド領域まで含めたシステム全体のマクロな空間構造を高時間分解能で観測できる。これにより、フレア全体をカバーしながら、各領域で電子が如何に加熱及び加速されていくのかそのマクロな空間分布及び時間発展を捉え、リコネクションがグローバルに果たす役割を定量的に理解する事が期待できる。

[1]    T.K.M. Nakamura et al., JGR 123, 9150, 2018
[2]    H. Arnold et al., PRL 126, 135101, 2021
[3]    J. Birn & M. Hesse, JGR 119, 290, 2014

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