太陽のマイクロフレアから活動星の超巨大フレアまでに至るスケーリング則:(左)フレア時のプラズマ温度とエミッションメジャーとの関係(Shibata & Yokoyama 1999, Tsuboi et al. 2016)(右)フレア中の最大光度と減衰時間との関係(Tsuboi et al. 2016)

 宇宙におけるプラズマの冷却過程として伝導と輻射がどのように効いているかは宇宙物理現象を理解する上で常に問題になる。
 系外の大規模な恒星フレアにおいては輻射冷却が優勢だというのが一般的な理解であるが、伝導も無視できるほど小さくはない可能性がある。正しい恒星フレアの理解のためにはフレアループの幾何および温度分布を明らかにすることが重要になる。
 系外の恒星では空間情報は得られないので、我々は間接的な方法でこの問題に取り組んでいる。2016年の研究では太陽フレアから、10桁に及ぶ、フレア中の最大光度と減衰時間との間のスケーリング則を導いた [1]。しかし、伝導もしくは輻射のどちらが優勢であってもこの相関に近い形となり、冷却過程としてどちらが優勢であるかの特定には至っていない。
 太陽フレアは現時点で空間分解できる唯一の恒星フレアである。空間分解でき、なお時間分解と分光ができることは、フレアの冷却、もしくは発展の根本的理解に繋がる。
 PhoENiXではこの「空間・時間・波長の同時分解」が初めてできる。伝導冷却が効いていればフレアループの根元に、輻射冷却が効いていれば密度の高いところに目立つ冷却の痕跡が現れると予想される。 PhoENiXでこれらが明らかになることを期待する。

[1]    Tsuboi et al., 2016, PASJ, 68 (5), 90 (1–20)

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