太陽フレアシステムの概略。磁気エネルギー(緑背景のボックス)が磁気再結合を通して、運動エネルギー(青背景)、熱的エネルギー(赤背景)、非熱的エネルギー(黄色背景)に変換されるが、その変換の過程には様々なプラズマ構造(白背景、枠の色は各種エネルギーの色に対応する)が介在し、複雑なシステムを構成している。

 磁気再結合は、磁場中に蓄えられて磁気エネルギーを解放し、そのエネルギーを運動エネルギー、熱エネルギーに短時間で変換することが出来るプラズマプロセスである。そしてこの磁気再結合は、効率的な粒子加速のための環境を形成する機構として注目されている[1]。
 例えば、太陽フレアはこの磁気再結合によって駆動されており、解放された多くの(時に半分以上もの)エネルギーが粒子の加速に使われていることが知られている大変優秀な加速器である [2]。しかし、その加速機構については未だ未解明である。その理由は、太陽フレアのシステムとしての複雑さにある。太陽コロナ中で生じる磁気再結合は、様々なプラズマ構造(電流シート、プラズモイド、衝撃波、乱流、磁気ループ構造など)を形成するが、これらの各構造はエネルギーの変換器(加速器)として作用することができる(図参照)。
 つまり、加速器としての太陽フレアを理解するためには、これらの構造を取りまとめシステムとして理解する必要がある。しかし、これまでの研究は、観測も理論も各構造を切り出しての研究しか行われておらず、このため太陽フレアにおける粒子加速は謎のままとして残っている(太陽物理学における重要未解決問題の一つ)。
 そこで、太陽フレアをシステムとして理解すべく、新機軸の観測である「X線集光撮像分光観測」を提唱する。X線帯域は、100万度程度〜数千万度の熱的プラズマ、そして非熱的電子(加速電子)から放たれるため、磁気再結合が生み出す高エネルギープラズマ現象の調査に適している。このX線を、ミラーを用いて集光することで、明暗様々な構造から成るフレア領域全域を明瞭に捉える。そして、2次元高速度カメラを用いて高速連続撮像またはイベント駆動を行うことで、ミラーが集めたX線光子1個1個の位置・時間・エネルギー情報を光子ごとに計測する。これにより、各プラズマ構造の構造的特徴や物理量(温度・密度・非熱的情報・視野面内の速度など)の時間変化が追えるようになる。
 この観測が実現すれば、図にあるような太陽フレアシステムにおけるエネルギーの変換過程を調査することが可能となる。すなわち、粒子加速研究はもちろんのこと、粒子加速と同じく未解決問題のコロナ加熱の研究も実施できる(図の黄色の吹き出し)。また、太陽フレアにより生成される高エネルギー粒子やX線などの電磁波は、地球周辺の宇宙環境に大きな影響を及ぼすことが知られており、フレアによる宇宙天気変動の理解や影響の把握の観点でも貢献し得る。

[1]    Uzdensky et al., 2011, ApJL, 737, L40
[2]    Aschwanden et al., 2017, ApJ, 836, 17

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